諸君!
これは、私の爺さんの話。爺さんは酒好きの労働者であった。尋常小学校を卒業して工員になり、戦中は熟練工として軍需工場で働き、戦後は進駐軍の技師として働いた。戦争を賛成も反対もするわけでなく、時代を生き抜くことに必死だった。ただただ、働いて酒飲んで寝て、また働いた。
「短い人生、おもしろおかしく生きるんじゃ。」が口癖だ。
一晩で一升空けることもザラ、そんな生活を続けていたので糖尿病になった。
そして、88歳にして断酒。
その後、若干アルツハイマー気味になった。
老人ホームにいるのか駅のホームにいるのか解らなくなっていた。若いころは、電車で工場に通勤していたらしい。
やがて、98歳にして迎えが来た。大往生だ。そして息を引き取る前の最後の言葉が「酒もってこい。」であった。
関東大震災や戦争、高度経済成長、バブル崩壊と激動の時代を生き抜いた。
晩年は海外旅行にも行った。悔いはなかったであろう。
しかし、はたして、あの時断酒するべきであったのか?断酒してもしなくても十分長生きしただろう。
長生きすることより、悔いなく生きること。そのために一生けん命いきるのダ。
以上。つづく。